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「オスギリアスの夏の光」のこと

それは後に王となるミナルディルがまだ50歳ばかりで王位継承権第三位の公子であった頃、武術競技会の馬上槍試合で同じ齢の海軍長官嫡男ブロンウェと決勝戦を戦い、僅差で公子が勝利の判定を受けた時の事である。

ブロンウェは公子の手の方が遅かったと主張したが主審はそれを容れず、副審達も皆主審に同調して判定は覆らず決しかけた。

その時静まり返った観客席から「殿下の負けです」と声が掛かった。

「今申したのは誰か」というミナルディルの声に臆する事無くすっくと立った声の主を見れば、それはまだ20代半ばの年端もゆかない色の白い少年であった。

審判団と観客達が息を飲む中、不意にミナルディルの明るい笑い声が場内にこだまし、公子はその少年に名を問うた。

フーリンと答えた少年にミナルディルは「フーリンか。だが予はそなたを、“予のファエラドール”と呼ぼう。これから後そなたは、人が予に投げかけぬ正しき言葉の投げ手となって予に仕えよ」と言った。

斯くてこれ以後フーリンは“ファエラドール”の通り名で呼ばれるようになり、ミナルディルとこの時の対戦相手である後の海軍長官ブロンウェ、そして後にミナルディルの執政となるファエラドールことフーリンはこれを機に固い友情で結ばれたのである。

後年、その友情は王宮内に潜む不正を数多白日の下に暴き出させる事となり、王宮内の浄化を望む者等はその友情の輝かしい功績を“オスギリアスの夏の光”と呼び、この三人に大きな期待を寄せた。

だが王となった兄二人が短い在位で次々と世を去り、王位に就く事はないと思われていたミナルディルが玉座に上った事で事態は急変した。

ミナルディル即位の年、大きな悲劇とともに三人の友情は終わりを告げた。

 

補足説明

今回出てきたフーリンの通り名“ファエラドール”ですが、これは書き手の完全捏造です。

フーリンからペレンドゥアまでの執政の名前については参照した追補編では分からなかったので、やむなく当二次創作としてはミナルディルからオンドヘアまでの各王に対する執政の名前を捏造しました。

ただ捏造にしてもそれなりに意味のある名前で、尚且つ設定してある執政のキャラに合う名前を…と考えるとこれがかなり大変で…(^^;

安直な捏造とはいえそれらしい名前にする為、まず設定メモの中からキーワードになる単語を英訳して、更にその単語をエルフ語訳し、設定しているキャラのイメージとかけ離れない語感になるようにこじつけなりに単語を組み合わせて…と、四苦八苦しました。

そもそも書き手は学生時代に英語で28点という点を取った事もある程英語が苦手です。

なので英訳も半泣きなのにそれを更にエルフ語訳…無謀もいいところです(^^;

ならやるなよって感じなんですけど、ここまでくるともうほとんど意地で…。

という事で、一例としてファエラドールの名付けについてですが、書き手がどうしても名前の中に“公平”と“手”という単語を入れたかったので、結構強引ではありますが、fair(公平)=faelとthrower(投げ手)=hadorを組み合わせてfaelhador(公平な投げ手)=ファエラドールとなりました。

因みにブロンウェはずばりfaith(信念)=bronwe、そして今後登場するかどうか分かりませんが、ブロンウェにはメルニーアという妹もいます(笑)

尚今回の年齢換算としてはミナルディル時代の西方人平均寿命200歳設定として、換算年齢で50歳のミナルディルとブロンウェはただ人換算20歳、ファエラドールは24歳で換算齢10歳のビジュアルイメージで設定しています

 

 

 

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